2013年1月20日日曜日
INTO THE WILD
これは間違いなく、ボクがもっとも影響を受けたヒューマン映画です。
「おすすめのヒューマン映画は?」と聞かれて、これを勧めることはまずありません。
きっと多くの人には理解が出来ないし、そのために「つまらない」などと思われてはたまったもんじゃありませんから(笑
しかしこの作品はボクがもっとも好きな映画3本のうちの1つに入ります。
物語はこうです。
「アラスカの荒野で、一人の若者が発見された。
クリス・マッカンドレスはエモリー大学を優秀な成績で卒業し、ハーバード大学のロースクールに入れるほどで、将来を有望視されていた若者だった。
ところが卒業後のある日 彼は財産,身分証明,名前の全てを捨て旅にでる。
最終目的地はアラスカ。
そこで彼が見つけたものとは・・・・。」
原作は小説『INTO THE WILD(邦題:荒野へ)』 著者はジョン・クラカワー氏。
彼はニューヨークの新聞の短い報道記事に「アラスカで若いハイカーの遺体が見つかった」というのが載っているのを見て、書こうと決意したのだそうです。
ジョン・クラカワー氏は若いころ、一人でアラスカへ行き、そこで三週間を過ごしたのだそうです。
彼はこう言います。
「俺がもしあの時死んでいたら、この若者と同様に『無謀な。』などと言われていただろう。そう、世間はそう言うんだ。でもそうじゃない。俺や彼は自殺願望なんて無かったし、マトモだった。だから気持ちを代弁したかった。これを書いたのは彼のためでもあるが、俺のためでもあるんだ。」
これを映画化した監督はショーン・ペン。
彼は行き着けの古い書店でこの本を見つけ、ピンと来たのだそうです。
彼はこう言いました。
「表紙を見てピンときた。それでその日の夜のうちに2度読み通した。次の日の朝、朝早く起きると、すぐに出発した。両親から映画化権を貰うためにね。(中略)一度話はまとまりかけたんだ。しかし連絡があった。『やはり無理だ』とね。その10年後。『心の準備が出来た』と言われた。」
両親が感じたこと、考えたことは、想像できません。
それに、彼 クリス・マッカンドレスは映画化されることを望んではいなかったでしょう。
有名になることも、ヒーローになることも望んでいなかったでしょう。
主演はエミール・ハッシュ。
ショーン・ペンは彼の姿を見て、こう思ったのだそうです。
「がっちりとした体格。少年のような顔。目には知性を宿している。まさに、クリス・マッカンドレスだ」
彼は子供のころに、クリス・マッカンドレスについてテレビで見たのだそうです。
そして影響を受けたのだそうです。
まだ他にも語れることはあるのですが、そろそろ物語に着目しようと思います。
物語の主人公はクリス・マッカンドレスという青年。
彼は非常に頭が良く、本が好きであった。
影響を受けた作家はトルストイ、ジャック・ロンドン、ソロー、ボリス・パステルナーク、ニコライ・ゴーゴリ。
彼はいつでも本の一文が頭に浮かんでは、引用していた。
たとえば映画のワンシーンでは、
「you look like a loved kid,be fair (家族を)公平に見なきゃ」と言われた彼はこう言いました
「I refer a phrase Thoreau here,rather than love,than money,than faith,than fame,than fairness,give me truth ソローを引用する、愛よりも、金よりも、信心よりも、名声よりも、公平さよりも、真実を与えてくれ」
ソローは『ウォールデン・森の生活』と言う本で有名ですね。
またこれはクリス・マッカンドレスの愛読書だったようです。
本はソローがウォールデン湖畔に建てた小屋での自給自足の暮らしの中、感じたことなどが描かれています。
また彼は文明及び文明の産物が嫌いでした。
ある文を引用します。
「人は文明を作ることで、自然の厳しさから逃れてきた。それはそれで結構なことだが、そのために生きる喜びは鮮明なものではなく、曖昧なものになってしまった。」
これは推測ですが、
彼は「お金」という存在が嫌いだったのでしょう。
負債を生み続ける「お金」という存在。その存在のために苦しむ人や地球。人々は「お金」という存在のために、「物質的豊かさ」が「人生の豊かさ」だと勘違いする。「幸福」に、「お金」など必要ないということ。そのお金を追求する、「社会」や「文明」という環境。
この推測の根拠は、彼の好きな作家です。
トルストイやソロー。彼らはそういった考えの持ち主です。
つまり、「お金」が好きではない。
ソローはお金が好きでないからこそ、森の生活を営んだし、
トルストイは映画の中にも出てきますが その著書の中でこう言っています。
「私は長いこと生きてきた。
そしていま、幸福のために何が必要であるかわかったような気がする。
静穏な隠遁生活である。
人々の役に立つこと、人によくするのは簡単だ。皆、親切に慣れていない。
人の役に立てる仕事をすること、自然、書物、音楽、隣人への愛。
それが私の幸福の概念だ。
そして最も必要なのはきっと、人生の伴侶と子供かもしれない
他に何を望めようか。」
そして何より、ボクもお金が好きではありません。
そういった理由で、彼が全てを捨て旅に出たのは必然だったと言えるでしょう。
「一度は自分を試すこと
一度は太古の人間のような環境に身を置くこと
自分の頭と手しか頼れない
そんな状況に 一人で立ち向かうこと」
彼はこの言葉を目にしていたはずです。
しかしこの言葉によって旅に出たかは定かではありません。
だからボクは、こう思います。
彼の心の中にあったのは
物質主義の横行する社会・文明への嫌悪、アラスカを代表とする自然への傾倒、自分の考えていることと行動を一致させないと気がすまない応用精神主義、自分の考える 幸せの追求
ジョン・クラカワー氏は言います。
「映画の最後に 本物のクリスの写真が映し出される。
映画を最後まで見ると、不思議な現象が起こる。
クリスとエミールは別人のはずなのに、
本物の写真を何年も見続けてきた私にさえ、
エミールが本物のクリスに見えるんだ。」
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